ジョン・ウー監督を大阪へ呼んだ男、4回連続で掲載されました。

ジョン・ウー監督を大阪へ呼んだ男 近鉄電車逆走の要求にも… 映画「マンハント」

第1回    世界の巨匠を大阪へ呼べ
 大阪を映画ロケ地の聖地に-。世界で活躍するジョン・ウー監督が日本を代表する人気俳優、福山雅治を主演に抜擢し、大阪で大掛かりなロケを敢行した映画「マンハント」が全国で公開中だ。大阪府や市、大阪府警が全面協力した初の海外大作。
あべのハルカスや大阪上本町駅、堂島川など大阪の街並がふんだんに登場するが、同駅を閉鎖し電車を“逆走”させるなど裏方として尽力、大阪誘致を成功させた“仕掛け人”がいる。近鉄グループホールディングス広報部の福原稔浩さん(61)。
「世界規模の大作映画は大阪の魅力を世界に知ってもらうチャンス。次作のロケ誘致の可能性も広がり、インバウンド(訪日外国人旅行)効果は計り知れない」と福原さんは期待を込める。その舞台裏を追った。
世界の巨匠を大阪へ呼べ
「大阪で新作の撮影を構想中だがロケは可能か?」
トム・クルーズ主演のハリウッド・アクション大作「ミッション・インポッシブル2」などで知られるウー監督のエージェントから、福原さんに連絡が入ったのは平成27年秋。新作の構想とは、ウー監督が敬愛する高倉健主演の名作「君よ憤怒の河を渉れ」(昭和51年)をオマージュしたリメーク作だった。香港ノワール(犯罪映画)の傑作「男たちの挽歌」シリーズでチョウ・ユンファが演じた二丁拳銃の銃撃戦や、「ミッション-」でクルーズが演じたバイクの追跡シーンなど斬新なアクションを得意とするウー監督。
第2回   常識破りの“電車逆走”
それだけに福原さんは「これまで大阪で行われた邦画のロケとは違い、かつてない大掛かりな撮影になることが予想されました」と振り返る。
大阪がもう1人の主役
《日本の大手製薬会社の中国人顧問弁護士、ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)が自宅ベッドで目を覚ますと隣に女性の死体が横たわっていた。府警は彼を殺人犯と断定、逮捕しようとするが、その直前、彼はワナだと気づき逃走する。捜査陣が彼を追いつめる中、孤高の刑事、矢村(福山)だけは事件に違和感を覚え、ドゥに共感し始める…》
「君よ-」のリメークはウー監督にとっての長年の悲願だった。福原さんはウー監督を大阪へ何度も呼び、ロケ地として使用できそうな候補地を一緒に探し歩いたという。
映画のオープニング映像で登場するのは大阪・天王寺の日本一高いビル「あべのハルカス」。矢村がドゥを追跡する場面では大阪上本町駅、矢村とドゥの水上バイクのチェイスシーンでは堂島川が映し出される。
すべて福原さんがウー監督と一緒に歩いて厳選したロケ地が採用されている。
常識破りの“電車逆走”
「特にウー監督がこだわったのは、逃走中のドゥが上本町駅の大階段を駆け下り、そのまま電車に飛び乗り捜査陣を振り切るシーン。実はこの場面は電車を逆走させているんです」と福原さんは明かした。
第3回    大阪をロケの聖地に
「ウー監督は同駅の大階段を気に入ったのですが、現実には、ドゥが階段を駆け下りてくる方向とは逆向きに電車は走行します。監督は、どうしても映画の構図として電車を逆に走らせたい、と無理難題な要求をしてきたんです」
元電車運転士だった福原さんは、電車を逆走させる困難さを人一倍理解していたが、ウー監督の熱意にほだされ、あえてこの要求を受け入れたという。
“前代未聞”の逆走場面の撮影は、近鉄奈良線の最終電車出発後、同駅で深夜から未明にかけて計3日間行われた。
「運転士や線路の整備スタッフらを集め、安全に電車を逆走させるプランを綿密に話し合いました」と福原さんは言う
また、真昼の雑踏シーンを再現するため、深夜の駅構内に大勢のエキストラを集める必要があった。
「近鉄グループの社員やその家族たちが応援に駆けつけてくれたんですよ」と福原さんは苦笑した。
大阪をロケの聖地に
福原さんには近鉄グループホールディングス広報という担当以外に、もう一つの肩書がある。映画やテレビドラマなどの撮影を支援するため、同社が平成23年に創設した近鉄ロケーションサービスのプロデューサーだ。
第4回(最終版) 経済効果は数10億円
「映画やドラマ撮影に協力することは企業にとっての宣伝や経済効果だけでなく、大阪の魅力を全国に広める効果がある」と福原さんが会社と交渉し、立ち上げ、自らその先頭に立って誘致活動に尽力してきた。
「マンハント」の製作費は邦画とは桁違いの約50億円といわれている。
「撮影中は海外からのキャストやスタッフの滞在費など。公開後は世界から映画ファンが大阪を訪れるインバウンド効果が期待され、さらに海外の映画人が大阪に興味を持ち新作を撮りに来てくれるかもしれない…。可能性は無限に広がります」と福原さん。
すでに、複数の海外の映画会社から大阪ロケの打診が来ているという。

https://www.sankei.com/west/news/180220/wst1802200002-n1.html